ドクターズインタビュー

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院長インタビュー

数値だけでは見えないリスクがある 血糖値の「変動」に着目した糖尿病診療

数値だけでは見えないリスクがある
血糖値の「変動」に着目した糖尿病診療

糖尿病治療への思いをお聞かせください

糖尿病治療への思いをお聞かせください

私は循環器内科医として、心臓の血管に起こる動脈硬化を専門に診てきました。動脈硬化の原因はいくつかありますが、中でも大きいのが血糖値の変動です。血圧やコレステロールについては積極的に治療されるのですが、血糖値に関しては意外と見落とされがちで、糖尿病になってから専門医に紹介されるケースがほとんどでした。

しかし実際には、糖尿病と診断される前の「境界型(予備軍)」の段階で心筋梗塞を起こす方が少なくありません。境界型では様子見になりがちですが、その段階こそが動脈硬化の進行に深く関わっていることを、長く臨床に携わる中で気づきました。

血管が傷つく前に手を打つ。それが私の目指す糖尿病治療です。

クリニックの糖尿病内科の特徴は?

当院では、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を5.5%以下に近づけることを目標にしています。一般的な糖尿病診療では6~7%が目標とされることが多いのですが、私の経験上、その数値でも心筋梗塞を起こす方はいらっしゃいます。だからこそ、より厳しい基準を設けているのです。

もう一つの特徴は、HbA1cの数値だけではなく「血糖値の変動」にも注目している点です。HbA1cが同じでも、血糖値が乱高下している方と安定している方では血管へのダメージが違いますから。当院では頸動脈エコーで血管の状態を評価して、お一人おひとりに合った治療方針を考えていきます。

大切なのは「順番」と「タイミング」 無理なく続けられる食事・運動のコツ

大切なのは「順番」と「タイミング」
無理なく続けられる食事・運動のコツ

食事で気をつけるポイントは?

食事で気をつけるポイントは?

よく「野菜から先に食べましょう」と言われますが、実はかなりの量を食べないと効果が出にくい。サラダボウル一杯分以上の野菜を毎食となると、現実的ではありませんよね。

私がおすすめしているのは「プロテインファースト」、つまりタンパク質を先に食べる方法です。卵や納豆、ささみなどを最初に食べると、血糖値の上昇を抑えるホルモンが分泌されます。タンパク質を食べてから10~15分ほど間隔を空けて炭水化物を摂ると効果的です。

また、糖尿病の治療中は「甘いものは絶対ダメ」と思っている方も多いですが、そんなことはありません。食べる順番さえ守れば、基本的にどんなものでも食べていただけます。

効果的な運動法はありますか?

運動で大切なのは「下半身を使うこと」と「タイミング」、この2点です。私たちの筋肉の約70%は下半身に集中しています。腕立て伏せやベンチプレスよりも、スクワットのほうが血糖値を下げる効果は大きいですね。

そしてタイミングですが、食後すぐに体を動かすのがポイントです。血糖値が上がりきってからでは遅く、食後30分経ってからでは効果が薄れてしまいます。激しい運動は必要ありません。座ったままかかとを上げ下げする動きでも、続ければ効果が期待できますよ。無理なく続けられる方法を、一緒に見つけていきましょう。

お薬はあくまでサポート役 食事・運動・睡眠から整える血糖管理

お薬はあくまでサポート役
食事・運動・睡眠から整える血糖管理

薬についての考え方は?

薬についての考え方は?

基本的には、食事療法と運動療法が治療の土台です。それでも血糖コントロールが難しい場合に、お薬を検討していきます。

最近はGLP-1受容体作動薬という種類のお薬が注目されています。これは血糖値を下げるだけではなく、食欲を抑える効果もあり、なおかつ体重減少も期待できる魅力的なお薬です。しかし、決して万能ではなく、使う期間が長くなるほどやめた時のリバウンドが大きくなりやすい点には注意が必要です。

だからこそ、お薬を使う場合でも食事・運動療法は必須です。お薬はあくまでサポート役ですので、「食べ方や運動習慣によって血糖値の変動を抑える」という意識は、常に持っていてほしいですね。

睡眠も血糖値に関係しますか?

大いに関係します。睡眠不足の翌日は、血圧も脈拍も血糖値も上がりやすくなる。これは私自身の実験でも確認しています。

診察では必ず「昼間に眠気はありませんか?」とお聞きするようにしています。睡眠時無呼吸症候群があると、いくら食事や運動を頑張っても血糖値は下がりにくいからです。まずは睡眠の質を整えることが、血糖管理の第一歩になる場合もあります。血糖値だけを見るのではなく、睡眠や栄養状態も含めて総合的に診ていくことが大切ですね。

健診では見つからない「隠れたリスク」 血糖値の変動を見える化する

健診では見つからない「隠れたリスク」
血糖値の変動を見える化する

血糖値スパイクとは何ですか?

血糖値スパイクとは何ですか?

食後に血糖値が急上昇して、その後急降下する現象のことです。健康診断で測る空腹時血糖やHbA1cが正常でも、食後だけ血糖値が跳ね上がっている方は意外と多いのが実情です。

厄介なのは、一般的な健診では見つかりにくいこと。空腹時に採血するので、食後の急上昇は見逃されてしまいます。しかし、この血糖値スパイクこそが血管を傷つけ、動脈硬化を進める大きな原因になります。認知症やがんとの関連も指摘されていますので、「自分は大丈夫」と思わず、一度調べてみることをおすすめします。

FreeStyleリブレを活用している?

FreeStyleリブレは腕に小さなセンサーを貼り付けて、血糖値の変動を24時間記録できる機器です。保険適用となるのは一部の糖尿病患者様ですが、当院ではそれ以外の方にも自費で提供しています。血糖値スパイクの発見には欠かせないツールだと考えているからです。

特におすすめしたいのは、食後に強い眠気を感じている方です。食後の眠気は、血糖値が急上昇した後に急降下する「反応性低血糖」が原因かもしれません。リブレをつけることで、ご自身の血糖値がどう動いているのかを目で見て確認できます。ご自身の血糖値変動の傾向を見ながら、「この食べ方なら上がらない」というコツをつかんでいただきたいですね。

我慢ではなく、工夫で続ける あなたに寄り添う糖尿病診療

我慢ではなく、工夫で続ける
あなたに寄り添う糖尿病診療

診療で心がけていることは?

診療で心がけていることは?

患者様のお気持ちに寄り添うことです。同じ糖尿病でも、「できるだけ薬は使いたくない」という方もいれば、「しっかり薬で管理したい」という方もいらっしゃいます。まずはご本人の希望をお聞きして、それに合わせた説明をするようにしています。
高齢の患者様の場合は、厳しすぎる食事制限はかえって良くないこともあります。年齢や生活背景によって、目指すゴールは変わってきます。また、マグネシウムや亜鉛、ビタミンDといった栄養素にも目を向け、必要に応じて補充をご提案しています。

患者様へメッセージをお願いします

まず大切なのは、血糖値の変動が体に悪さをしていることに気づくことです。空腹時の血糖値が正常でも、食後に乱高下していれば、血管は少しずつ傷ついていく。健診では見つかりにくいからこそ、ご自身で意識していただきたいですね。

血糖値の管理は、いつから始めても何らかの効果が期待できます。血糖値の変動を意識した食生活こそが、いつまでも若々しく健康でいられる秘訣だと考えています。我慢ばかりの生活ではなく、食べ方を工夫しながら楽しく続けていく。そのお手伝いができれば嬉しいですね。