糖尿病の薬物療法について

糖尿病の薬物療法について

進歩する糖尿病の薬物療法

進歩する糖尿病の薬物療法

糖尿病の薬物療法は、近年大きく進歩しています。かつては低血糖のリスクと隣り合わせの治療が中心でしたが、現在は低血糖を起こしにくく、体重の減少や心臓・腎臓を守る効果が期待できる薬が登場しています。当院では、食事療法・運動療法を土台にしたうえで、患者様の体型や合併症の状態に応じて薬を使い分けています。

主な治療薬

GLP-1受容体作動薬

血糖値と体重を同時に改善する

GLP-1やGIPといった血糖値を下げるホルモンに作用する注射薬で、マンジャロやオゼンピックなどが代表的です。低血糖を起こしにくく、血糖値と体重の両方を改善できる点が特徴です。当院でも多くの患者様に処方しています。

筋肉量の低下に注意が必要

食欲が減るとタンパク質の摂取量も落ちやすくなるので、筋肉量が低下するリスクがあります。筋肉が減ると代謝が落ちるため、薬をやめた際にリバウンドしやすくなります。当院では血液検査でタンパク質代謝やビタミンB群の数値を確認しながら、筋肉量を落とさない使い方を心がけています。タンパク質をしっかり摂ること、運動を続けることが、この薬を効果的に使ううえで欠かせません。

薬だけに頼らないことが大切

GLP-1受容体作動薬は血糖値を一旦リセットするには非常に有用ですが、食事・運動療法を併用しないとやめた後のリバウンドが大きくなります。当院ではできるだけ少量で効果的に使い、食べ方の改善が定着してきた段階で薬を減らしていく方針を取っています。

SGLT2阻害薬

余分な糖を尿から排出する

血液中の余分な糖を腎臓から尿へ排出させることで血糖値を下げる薬です。血糖値や体重の下げ幅はGLP-1受容体作動薬と比べると穏やかですが、心臓や腎臓を守る効果が高く評価されています。

心不全・腎臓病のリスクがある方に

SGLT2阻害薬は心不全の抑制や腎機能の保護に対して高い効果が報告されています。尿検査で微量アルブミン尿が出ている方、心臓の負担を示すBNPが上昇している方、腎機能が低下している方に対して選択肢となります。

インスリン療法

インスリン注射の仕組み

インスリン注射は、体内で不足しているインスリンを外から直接補う治療方法です。注射したインスリンが血液中のブドウ糖を筋肉や臓器に届け、血糖値を下げます。1型糖尿病のようにインスリンがほとんど分泌されない方には不可欠であり、2型糖尿病でも血糖値が非常に高いケースなどで使用することがあります。

糖毒性を解除してから切り替える

高血糖の状態が続くと、膵臓のインスリン分泌機能がさらに低下して、同時にインスリンの効きも悪くなります。その結果、血糖値がますます上がりやすくなるという悪循環に陥ります(これを「糖毒性」と言います)。当院ではまずインスリンで血糖値を速やかに下げて糖毒性を解除して、膵臓の機能が回復した段階でGLP-1受容体作動薬などへの切り替えを検討します。最終的には薬の減量や中止を視野に入れた治療を目指しています。

注射の負担が軽くなっている

インスリン製剤にはペン型の注射器が広く使われており、針も細く短くなっています。1日1回の注射で効果が持続するタイプや、食事の直前に使う速効型など種類も増え、患者様の生活スタイルに合わせた組み合わせが可能です。

状態に合わせた使い分け

糖尿病の薬は種類が多く、どの薬が合うかは患者様の体型や合併症の有無、血糖値の状態によって異なります。あくまで目安ではありますが、以下のような考え方で薬を選択しています。

肥満のある方

GLP-1受容体作動薬で血糖値と体重を同時に管理します。ただし筋肉量の維持に注意を払い、タンパク質の摂取指導を併せて行います。

心不全や腎臓病のリスクがある方

SGLT2阻害薬を中心に、心臓と腎臓を保護する治療を優先します。

血糖値が非常に高い方

インスリンで糖毒性を解除してから、状態に応じて他の薬へ移行します。

痩せ型でインスリン分泌が少ない方

インスリン分泌を促す薬やインスリン療法を中心に、個々の分泌能力に合わせた調整を行います。

当院の薬物療法の方針

食事・運動を土台にした処方

神戸市灘区・JR六甲道のおおや内科 糖尿病・心臓クリニックでは、薬だけで血糖値を下げる治療は行いません。食べる順番や食材の工夫、栄養素の補充といった食事療法を土台に据え、必要な薬を必要な分だけ組み合わせます。頸動脈エコーで動脈硬化の進行度も確認して、数値だけではなく血管の実態を見ながら薬の要否を判断しています。将来的に薬を減らしていくことを常に念頭に置いた治療を心がけています。