血糖値スパイク

血糖値スパイク

食後に起こる血糖値の乱高下

食後に起こる血糖値の乱高下

食後に血糖値が急上昇して、その後急降下する現象を「血糖値スパイク」と呼びます。空腹時の血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が正常でも起こりうるため、通常の健康診断では見つかりにくいのが特徴です。当院では循環器専門医としてカテーテル治療に携わる中で、この血糖値スパイクが心筋梗塞や動脈硬化に深く関わることに着目して、その対策に力を入れています。

血糖値スパイクの特徴

食後に血糖値が急上昇する

食事で糖質を摂取すると血糖値は上がりますが、通常は緩やかに上昇して緩やかに下がります。これは血糖値を下げるホルモンである「インスリン」が適切なタイミングで分泌されるためです。

しかし、インスリンの分泌が遅れると、食後に血糖値が140mg/dL以上まで急上昇してしまいます。その後、遅れて過剰なインスリンが分泌されることで、今度は血糖値が急激に下がり過ぎてしまいます。この急上昇と急降下の繰り返しが「血糖値スパイク」です

血糖値スパイクの原因

血糖値スパイクの症状

血糖値スパイクによる血糖値の急変動は、以下のような症状を引き起こします。

  • 食後の強い眠気・だるさ
  • 発汗・冷や汗
  • 動悸
  • 手の震え
  • 強い空腹感
  • 不安感、イライラ
  • 集中力の低下
  • めまい、頭痛
  • 目のかすみ

食後の「異常な眠気」に注意

「食後に強い眠気に襲われて仕事や日常生活に支障が出る」「座っていられないほど意識がぼんやりする」といった経験はありませんか?食後の異常な眠気が毎食繰り返される場合は、血糖値スパイクが原因になっている可能性があります。

睡眠不足やストレスとは関係なく、食後に決まって起こる強い眠気は体からの異常信号です。放置すると糖尿病へ進行するリスクがありますので、早めに当院へご相談ください。

健診では見逃される理由

空腹時の検査では捉えられない

一般的な健康診断で測定するのは空腹時の血糖値やHbA1cです。血糖値スパイクは主に食後に起こる現象のため、空腹時の採血では捉えられません。HbA1cも1~2ヶ月の平均値を反映する指標であり、食後の一時的な急上昇は数値に現れにくい性質があります。

心筋梗塞患者の多くに隠れた異常

糖尿病の診断を受けていなかった心筋梗塞の患者様にブドウ糖負荷試験(OGTT)を行ったところ、83%に糖代謝の異常が見つかったという報告があります。通常の血液検査だけでは、こうした異常は見逃されてしまいます。

血管を傷つける血糖値の変動

急激な上下動がダメージの原因

血糖値スパイクが問題になるのは、急激な上昇と降下の繰り返しが血管の内壁を傷つけるためです。傷ついた血管壁にはコレステロールが蓄積しやすく、これが動脈硬化を進行させます。安定した高血糖よりも、この「変動」のほうが血管へのダメージは大きいとされています。

境界型でも心筋梗塞のリスクは高まる

血糖値やHbA1cが糖尿病の診断基準を満たさない「境界型」の方でも、心筋梗塞を起こすケースは少なくありません。糖尿病と診断されていなくても、血糖値スパイクを繰り返していれば、血管は少しずつ傷ついていくからです。

高血糖のダメージは蓄積する

AGEによる血管の老化

血糖値が高い状態が続くと、体内のタンパク質に過剰な糖が結合してAGE(終末糖化産物)が生じます。AGEは血管を硬くして、動脈硬化を進める要因の一つです。こうしたダメージは少しずつ体に蓄積されていきます。

早めの対応が将来を左右する

早い段階で血糖値を改善すると、その効果が10年、20年先まで持続するとされています(レガシー・エフェクト)。逆に高血糖の期間が長引くほど、治療の効果も出にくくなります(糖毒性)。血糖値スパイクの段階で気づき、食べ方を見直すことが将来の健康を守ることにつながります。

血糖値スパイクの見つけ方

OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)

75gのブドウ糖を含んだサイダーを飲み、その後の2時間にわたって血糖値の変動を測定する検査です。空腹時の数値だけでは見つからない食後の高血糖を捉えることができます。

OGTTをおすすめする方

【強く推奨(現在、糖尿病の可能性がある方)】

  • 空腹時血糖値が110~125mg/dL
  • 随時血糖値が140~199mg/dL
  • HbA1cが6.0~6.4%

【実施が望ましい(将来、糖尿病のリスクが高い方)】

  • 空腹時血糖値が100~109mg/dL
  • HbA1cが5.6~5.9%
  • 高血圧、脂質異常症、肥満など動脈硬化のリスクを持つ方
  • 家族に糖尿病の方がいる、または肥満がある方

FreeStyleリブレ(持続血糖モニタリング)

腕に500円玉大のセンサーを貼るだけで、2週間の血糖変動をスマートフォンで記録できます。普段の食事での血糖値の動きが見えるため、どの食べ方で上がるかを具体的に把握できます。

当院では糖尿病の早期発見を目的に、FreeStyleリブレを使用した「糖尿病ドック」を実施しています。糖尿病が心配な方は、ぜひご活用ください。特に食後に強い眠気に襲われる方は、血糖値スパイクを起こしている可能性が高いので、早めのご相談をおすすめします。

当院での血糖値スパイク対策

循環器と糖尿病の両面から評価

神戸市灘区・JR六甲道のおおや内科 糖尿病・心臓クリニックでは、OGTTやリブレを活用して、血糖値スパイクの早期発見に取り組んでいます。循環器内科と糖尿病内科の両方の視点から血糖変動と心血管リスクを総合的に評価して、頸動脈エコーで動脈硬化の進行度も確認します。

まず食べ方の見直しから

血糖値スパイクが見つかった場合は、食べる順番やタイミングの工夫、栄養素の補充など、薬に頼る前にできることから対策を始めます。食後の眠気や集中力の低下が気になる方は、一度ご相談ください。

血糖値が上がりきる前に体を動かす

食後は血糖値が上がりきる前に、運動することが大切です。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動も良いですが、筋トレやストレッチでも血糖の上昇を抑える効果はあります。ご自宅やオフィスでも実施できるので、まずはこれらから始めてみましょう。

【自宅でできる運動】

  • その場で足踏みをする(1~2分程度)
  • スクワット(10~15回を目安に)
  • かかとの上げ下げ運動(立った状態で20~30回)
  • 階段の上り下り
  • 軽いストレッチ(太ももや背中を伸ばす)
  • 食器洗いや掃除などの家事で体を動かす

【オフィス・外出先でできる運動】

  • 座ったままかかとを上げ下げする
  • 座ったまま太ももを持ち上げる(左右交互に)
  • デスクに手をついて軽く腕立て伏せをする
  • トイレに立つついでに軽く屈伸する
  • エレベーターではなく階段を使う
  • 一駅分歩く、少し遠回りして歩く

下半身の運動が有効

下半身の運動が有効
下半身の運動が有効

当院の検証では、上半身の筋トレよりも下半身の運動のほうが血糖値を大きく下げる結果となりました。これは下半身に全身の筋肉の約70%が集中しているためです。スクワットやかかと上げ運動など、無理なくできることから始めてみましょう。

タイミングは食後すぐ

血糖値が上がりきってからでは、運動の効果は限られます。食後はなるべく早く体を動かすようにしましょう。